公開日:2025.09.29

事例で学ぶ、サービス業界向けの調査内容とは? ~実践的な調査事例10選~

  • マーケティングリサーチHowto

今日のサービス業界では、消費者の価値観が変化し、単なる利便性だけではなく、一人ひとりに合わせた対応や環境への配慮が重視されるようになっています。これに伴い、従来の画一的なサービスに加えて、よりパーソナルな体験や、サステナビリティを意識した取り組みが注目されています。

このように多様化する顧客ニーズへ的確に応えるためには、過去の経験則に頼るだけではなく、データを活用した客観的な意思決定が不可欠です。また、顧客満足度を追求すると同時に、サービスの担い手である従業員を確保し、働きやすい環境を整えるという社内的な課題にも取り組まなくてはなりません。

これら内外の課題に対応するためには、顧客の声をより深く理解し、潜在ニーズを掘り起こすマーケティングリサーチが、今まさに重要な役割を担っています。

本コラムでは、サービス業界の調査事例を定性・定量調査の視点から厳選してご紹介します。これらの事例の「対象者の定義や手法、テーマ、調査内容など」を参考に、今後のサービス業界向けの調査企画のヒントが得られるでしょう。

 
 

定性調査

カフェチェーン新メニューに関する顧客評価調査


調査の結果得られたこと 試作品の評価では、ヘルシーメニューが健康志向の顧客に高評価を得たが、一部では価格が高すぎるとの指摘もあった。
また、メニュー名や写真の印象が購買意欲に影響していることが確認された。
クライアント カフェチェーン
調査目的 新メニューの味やビジュアルの市場受容性を確認し、発売前に改善点を特定する
調査手法 GI(グループインタビュー)
人数・対象者条件 20ss
首都圏の20~40歳男女/週1回以上カフェを利用する層
調査内容 ・試作品の試食と味の評価(風味、食感、満足感)
・メニュー名や写真の印象
・現在のメニューとの比較
・改善案や提案されるトッピングの意見
対応範囲 対象者リクルート、モデレーター手配、当日受付、データ収集・分析、レポート作成
特記事項 メニュー写真や試食を通じた視覚と味覚の両面からの評価を実施。価格帯の意識や購買心理も深掘りし、次回のキャンペーン企画に活用。
参加者間の意見交換を促進し、個別意見と集団内のコンセンサスを分析。
味の違いやパッケージの影響を購入意向と結びつける多角的な検証を実施。
さらに、調査結果を基にしたプロトタイプ改良案を提示し、早期の商品化支援を実現。

 

美容室における予約システムの利便性調査


調査の結果得られたこと 既存の予約システムは操作性に課題があるとの意見が多く、一部の顧客はLINEや電話での予約を希望することが判明。
また、予約確認の通知機能が不足しているという指摘があった。
クライアント 美容室チェーン
調査目的 予約システムの使いやすさを把握し、顧客満足度向上に繋げる改善案を立案する
調査手法 デプスインタビュー
人数・対象者条件 15ss
都市部20~40代女性/月1回以上美容室を利用する人
調査内容 ・予約時の手続きの感想
・現在の予約システムの不満点
・予約システムに求める機能や改善案
・他の予約手段(アプリ、LINE、電話)の利便性評価
対応範囲 対象者リクルート、モデレーター手配、当日受付、データ収集・分析、レポート作成
特記事項 デジタル予約に不慣れな層と積極的に利用する層の差異を分析し、ターゲット別の施策を検討。具特記事項体的なシステム改善案を得るため、予約フローの模擬体験を取り入れたインタビューを実施。
操作性だけでなく、安心感や信頼性を高める要素も抽出。加えて、競合の予約システムとの比較を行い、差別化のポイントを特定。

 

フィットネスクラブの退会理由調査


調査の結果得られたこと 退会理由の多くが「価格の高さ」「施設利用の不便さ」に集中。
一方で、オンラインクラスの導入や営業時間の拡大が再契約の鍵になることが示唆された。
クライアント フィットネスクラブ運営企業
調査目的 退会者の理由を深掘りし、再契約や新規顧客獲得施策を提案する
調査手法 オンラインインタビュー
人数・対象者条件 10ss
1年以内に退会した20~50代男女
調査内容 ・退会理由の詳細(価格、アクセス、内容)
・他社サービスとの比較
・再契約を検討するための条件
・新サービスの期待
対応範囲 対象者リクルート、モデレーター手配、当日受付、データ収集・分析、レポート作成
特記事項 特に再契約の可能性が高い層を特定するため、条件別シナリオ分析を実施。オンライン形式を活かし、特定の施設に限定しない幅広い意見収集を実現。
価格面以外に注目すべきポイントを深堀りし、改善優先度を明確化。さらに、調査対象者のライフスタイルを考慮した新しいサービスモデル案を提案。

 

スパ施設のリラクゼーション効果調査


調査の結果得られたこと スパ利用者の多くが「ストレス軽減」や「リフレッシュ感」を評価する一方で、施設内の動線や混雑に対する不満が上がった。
また、プライバシーを重視する声が多く聞かれた。
クライアント スパ運営企業
調査目的 リラクゼーション効果の定性評価を通じ、顧客満足度の向上とサービス改善を目指す
調査手法 現地観察+インタビュー
人数・対象者条件 8ss
20~50代女性/月1回以上スパを利用する層
調査内容 ・利用後の感想と効果
・施設内動線や混雑状況に対する意見
・改善希望(プライバシー、雰囲気、サービス内容)
対応範囲 対象者リクルート、当日受付、データ収集・分析、レポート作成
特記事項 リラクゼーション効果を客観的に示すため、行動観察と利用者の詳細な感想を組み合わせて分析。
特記事項施設レイアウトや動線に関する具体的な提案を作成し、混雑緩和策を提案。
心理的満足度と物理的環境改善を統合したレポートを提供。
さらに、利用後の再来意向を高める要素を特定し、長期的な顧客満足向上策を提案。

 

サロン店舗の来店動機と習慣調査


調査の結果得られたこと 来店頻度に影響する要因として、顧客の生活スタイルやリフレッシュ目的のニーズが顕在化。
一方で、予約手続きや接客対応の改善要望が挙がった。
クライアント エステサロン
調査目的 顧客の来店動機や習慣を明確化し、サービス改善や来店頻度向上策を提案する
調査手法 日記調査
人数・対象者条件 20ss
都市部20~50代女性/月1回以上サロンを利用する層
調査内容 ・サービス利用シーンや満足点
・来店頻度に影響する要因
・日常生活における利用動機
対応範囲 日記フォーマット作成、データ収集、レポート作成
特記事項 調査期間を2週間とし、継続的な利用動機の変化を追跡。写真や感想の記録を促し、具体的なサービス改善提案に活用。
日常生活での利用頻度と習慣的な利用パターンを把握し、効果的なサービス提案を検討。加えて、来店時の心理的トリガーを特定し、プロモーション戦略に組み込むことで、新規顧客層の獲得にも寄与する提案を実現。

 

 

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定量調査

ホテル宿泊者満足度調査


調査の結果得られたこと 顧客は「清潔さ」「スタッフの対応」「朝食の質」に高い評価を与える一方で、無料Wi‑Fiの速度や駐車場の利用に改善要望が見られた。
クライアント ホテルチェーン
調査目的 宿泊者満足度を把握し、サービス改善とリピート率向上を目指す
調査手法 HUT(ホームユーステスト)
人数・対象者条件 50ss
全国20~60代男女/直近1年以内にホテルを利用した経験がある人
調査内容 ・宿泊時の満足点と不満点
・施設の設備やサービスの評価
・再訪意向の有無とその理由
・新たに期待するサービス
対応範囲 調査企画、調査票作成、データ収集・分析、レポート作成
特記事項 各部屋タイプや設備別に評価を収集し、ターゲット層ごとの満足度を明確化。
宿泊前後の期待値と特記事項実際の体験の差を検証し、ギャップ解消のヒントを提供。従業員の対応に関する詳細データを活用し、スタッフ教育プログラムの改善に役立てる。
また、季節ごとの宿泊傾向を分析し、プロモーション戦略に応用可能なインサイトを提供。

 

レストランの新メニュー需要予測調査


調査の結果得られたこと 新メニューのターゲット層により「ボリューム感」「健康志向」の重要度が大きく異なることが確認された。
また、SNS映えが購入動機の一つとして重要視されている。
クライアント 飲食チェーン
調査目的 新メニューの需要を予測し、最適なターゲット層やプロモーション方法を決定する
調査手法 ネットリサーチ
人数・対象者条件 800ss
20~50代男女/月に2回以上外食をする層
調査内容 ・新メニューの試作案の評価
・購入動機(価格、味、見た目、ボリュームなど)
・広告や販促の印象と期待
対応範囲 調査企画、調査票作成、データ収集・レポート作成
特記事項 性別や年齢ごとの嗜好差を数値化し、ターゲット層に最適化したメニュー開発に貢献。SNS映えや口特記事項コミの影響力を測定し、マーケティング戦略に反映。
季節や時間帯ごとの需要の変動も視野に入れた分析を実施。
さらに、データに基づく販促キャンペーン案を具体化し、実行可能な提案を作成。

 

シェアオフィスの利用コンセプト評価調査


調査の結果得られたこと 利用者は「集中できるスペース」と、「リラックスできるラウンジ」を高く評価。
一方で、立地や料金プランの柔軟性に改善要望が見られた。
クライアント シェアオフィス運営企業
調査目的 コンセプトの受容性を把握し、顧客満足度向上のための改善点を提案する
調査手法 コンセプト調査
人数・対象者条件 200ss
都心部30~50代男女/月10日以上シェアオフィスを利用する人
調査内容 ・提案するコンセプトの評価
・改善点や新たな要望
・作業効率やモチベーションへの影響
対応範囲 調査企画、対象者選定、データ収集、レポート作成
特記事項 調査対象者から新しい利用パターンの提案を収集し、既存のサービスへの応用を検討。競合他社特記事項のコンセプトと比較する質問を設け、差別化ポイントを明確化。
提供するサービスの多様性と一貫性を検証し、利用者の期待に応える提案を策定。
さらに、立地条件と料金プランの最適化案を導き出し、運営効率化を支援。

 

バーチャルツアーの利用満足度調査


調査の結果得られたこと 利用者の多くが「現地訪問の事前確認として便利」と評価し、バーチャルツアーをきっかけに訪問意向が高まる傾向がある。
一方で、画質や案内内容への改善要望があった。
クライアント 旅行代理店
調査目的 バーチャルツアーの満足度と訪問意向への影響を定量的に把握し、サービス改善を図る
調査手法 CLT(会場調査)
人数・対象者条件 50ss
20~60代男女/旅行計画の際にバーチャルツアーを利用した経験がある人
調査内容 ・利用後の満足度評価
・訪問意向の有無とその理由
・改善希望(画質、案内内容)
対応範囲 調査企画、モデレーター手配、レポート作成
特記事項 ツアー内容の没入感と利便性を定量的に評価し、潜在的なニーズを抽出。地域別の訴求力を比較し、観光地ごとの適切な改善案を提示。
利用者から具体的な意見を引き出し、次回のバーチャルツアー企画に活かす。
また、他媒体との連携を通じた新規顧客獲得の可能性を分析し、長期的な利用促進の方策を提案。

 

ギフト商品の購買意識調査


調査の結果得られたこと 購入者の多くが「デザイン」「価格」を重視する一方で、ギフト商品特有のストーリー性が購入動機に影響することが判明した。
クライアント 百貨店
調査目的 ギフト商品の購買要因を明確化し、売り場改善およびプロモーションに活用する
調査手法 ミステリーショッピング
人数・対象者条件 20ss
首都圏在住の20~50代女性/ギフト商品を購入した経験がある人
調査内容 ・店舗スタッフの接客評価
・商品選定基準の確認
・店舗での購買行動観察
対応範囲 調査実施、データ収集、レポート作成
特記事項 顧客が選択するプロセスを観察し、店舗ディスプレイや商品配置の改善に結びつける。
スタッフの接客態度と購買意欲の関係を定量化し、接客トレーニングに反映。購買行動データをもとに、訴求力の高い商品提案手法を開発。
さらに、購買後の満足度を測定し、リピーター獲得に繋がる施策を提案し、店舗全体の売上向上に寄与。

 

 

ネットリサーチ(WEBアンケート)

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Webシェルフ(棚調査)

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アスマークでは、Webシェルフ(棚調査)のサービスを提供しております。Webシェルフ(棚調査)は、スーパーやコンビニなどの商品陳列棚をWebで再現し、競合商品と陳列された際のパッケージの印象や購入意向などをWebアンケートにて聴取することができる調査です。

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おわりに

ここまで、サービス業界におけるマーケティングリサーチの具体的な調査事例を定性・定量の両側面から紹介しました。

多様化する顧客ニーズを的確に捉えるためには、顧客の行動データといった事実と、その背景にある感情や価値観といった本音の両面からアプローチすることの重要性です。

顧客の声を深く理解することは、新たなサービス開発のヒントになるだけではなく、既存サービスの改善点を明確にし、顧客満足度をさらに高めるための鍵となります。また、顧客からのフィードバックは、最前線でサービスを提供する従業員のモチベーション向上にも繋がるでしょう。

このコラムが、皆様のサービス業界向けのリサーチに対する理解を深め、より良い製品やサービスの開発につながる一助となれば幸いです。

当社では『サービス業界向けの調査』についてのお困りごとについて、ご相談を随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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