
2024.07.10
消費者インサイトとは?潜在ニーズとの関係性や顧客アンケート、マーケティング戦略ついて
「消費者の心をつかむこと」は、現代ビジネスにおいて重要なテーマです。激しい競合他社との競争が繰り広げられるビジネスでは、消費者の真の欲求を理解し、それに応えるこ……
公開日:2025.09.10
顧客ロイヤルティ(Customer Loyalty)は、顧客が特定の企業やブランドに対して抱く深い信頼や愛着などの忠誠心を指します。競争が激化する現代の市場において、この顧客ロイヤルティを高めることは、企業の成長に欠かせない要素となっています。
しかし、多くの企業はその重要性を理解していながらも、「どのように測定すればよいのか」「どんな指標を使えばよいのか」といった悩みを抱えています。
そこで、この記事ではそうした疑問を解消するために、顧客ロイヤルティを測るための代表的な指標を目的別に整理し、分かりやすく解説します。
顧客ロイヤルティ(Customer Loyalty)は、繰り返しになりますが、顧客が特定の企業やブランドに対して抱く深い信頼や愛着などの忠誠心を指します。これは単に「また買いたい」と思うことだけでなく、「この企業だから買いたい」という強い結びつきが生まれている状態です。
このロイヤルティが高い顧客は競合に乗り換えにくく、継続的にリピート購入を行う傾向があります。また、自ら積極的に周囲へ推奨し、ブランドのファンとして新たな顧客獲得にも貢献してくれる存在となります。
加えて、“購買”や“推奨”といった具体的な行動として表れる側面や、心理的な“愛着”という目に見えない側面の両方で構成されており、企業の安定的な成長を支える重要な要素となっています。
そのため、この後説明する、下図の行動ロイヤルティや心理ロイヤルティ、経済ロイヤルティの理解が重要です。

行動ロイヤルティとは、リピート購入や継続利用といった、顧客の目に見える行動を指します。
例えば、「この店はポイント還元率が高いから」「家から近いから」という理由で繰り返し利用する場合は、行動ロイヤルティに基づく行動です。
ただし、その動機が価格や利便性に基づいているため、より良い条件を提示する競合が現れると、簡単に乗り換えられてしまうリスクがあります。
一方、心理ロイヤルティとは、企業やブランドに対する愛着や信頼、共感といった、顧客の心に根付く感情的なつながりを意味します。心理ロイヤルティの高い顧客は「このブランドが好きだから」「企業の姿勢を応援したいから」といった理由で選び続けるため、多少の価格変動や利便性の低下では離れにくいという特徴があります。
両者の違いは、そのロイヤルティを支える動機にあります。行動ロイヤルティは合理性や利便性に基づくのに対し、心理ロイヤルティは感情や価値観に根差しています。
企業が本当に目指すべきは心理ロイヤルティを高め、「真のファン」を増やすことです。なぜなら心理ロイヤルティは、顧客が自発的に口コミを広めたり、ブランドコミュニティに参加したりするなど、結果的に行動ロイヤルティも生み出す原動力となるからです。
経済ロイヤルティとは、価格や特典といった経済的なメリットを理由に、顧客が特定の企業やサービスを繰り返し利用するロイヤルティを指します。
例えば、「このお店はいつも割引セールをしているから」「ポイント還元率が高いから」といった理由で購買が継続する場合は、経済ロイヤルティによる効果です。
経済ロイヤルティは、顧客の購買行動に直接作用するため、短期的に売上を伸ばせる即効性があります。
しかし、とても脆弱なロイヤルティであるという側面も持っています。企業やブランドの一時的なファンは動機が経済的メリットに依存しているため、競合他社がより有利な条件(低価格や高いポイント還元率など)を提示すれば、容易に流出してしまうリスクが高いからです。
つまり、経済ロイヤルティは顧客と企業の間に深い信頼関係や愛着を築くロイヤルティではないといえます。このタイプのロイヤルティに依存しすぎると、価格競争に巻き込まれやすく、ひいては企業のブランド価値を損なう可能性もあります。
そのため、持続的な成長を実現するには、経済的施策に加えて、心理ロイヤルティや行動ロイヤルティを高める取り組みを並行して行うことが大切です。
顧客ロイヤルティを測定する際に、売上やリピート率といった行動データだけに頼るのは適切ではありません。なぜなら、顧客が「なぜ」その行動をとったのかという心理的な背景を理解しなければ、真のロイヤルティをとらえられないからです。
本当に重要なのは、顧客が「この企業だから選びたい」「このブランドが好きだ」という強い心理ロイヤルティを持っているか見極めることです。そして、その心理的な側面を正しく捉えるためには、定量データと定性データを組み合わせて活用する必要があります。
定量データと定性データの役割
| 定量データ | 購買頻度、購入単価、利用期間、解約率など、顧客の行動を数値化したデータです。これにより、ロイヤルティの「強さ」を客観的に把握できます。 |
|---|---|
| 定性データ | アンケートやインタビュー、SNS上のコメントなどから得られる顧客の声です。そこには「なぜそのブランドを選び、使い続けているのか」といった理由や感情、価値観が表れます。 例えば、「ブランド理念に共感している」「カスタマーサポートがていねいだった」といった顧客の声は、心理的な結びつきを理解するうえで大きな手がかりになります。 |
両方のデータを組み合わせて分析することで、顧客ロイヤルティの全体像を立体的に把握できるようになります。行動ロイヤルティの背後にある心理ロイヤルティを見極め、双方をバランスよく育てていくことが、企業の持続的な成長を支えるポイントです。
顧客ロイヤルティを測定する際には、まずその目的を明確にすることが重要です。漠然と多くの指標を追いかけても、具体的な改善につながる知見は、なかなか得られません。
知りたいのは顧客の「行動」なのか、それとも「感情」や「心理」なのか。この目的を定めることで、選ぶべき指標も変わってきます。
この章では、顧客ロイヤルティを測る上で特に重視すべき指標を、「行動を測る指標」と「感情・心理を測る指標」の2つに分けて解説します。
顧客の行動を測る指標は、顧客ロイヤルティの「結果」を数値として客観的にとらえるためにとても重要です。これらの指標は、企業が提供する商品やサービスがどの程度継続的に利用されているのか、さらにその顧客が企業にどれほどの価値をもたらしているのかを示します。
ここでは、数ある行動指標の中でも特に重要性の高い「解約率」「リピート率」「LTV」の3つについて解説します。
解約率(チャーンレート)とは、一定期間内にサービスやサブスクリプションを解約したユーザーの割合を示す指標です。解約率は顧客ロイヤルティの低下を直接的に表すため、特に重要な指標とされています。
とりわけSaaS(Software as a Service)のような継続課金型商品の販売では、この数値が企業の成長に直結する指標となるため、常に注視する必要があります。
解約率は、以下の計算式で求められます。
解約率 = (期間内の解約者数 ÷ 期間開始時点の顧客数) × 100
例えば、月初に顧客数が1,000人で、その月に50人が解約した場合、解約率は5%となります。
解約率の分析は、単に全体の数値を見るだけでなく、解約した顧客の属性や利用状況を深掘りすることが重要です。定性的な「なぜ顧客は解約したのか?」という理由を特定することで、商品やサービスの改善点、顧客サポートの課題などを具体的に見つけ出せます。
解約率を下げることは、既存顧客の維持につながり、新規顧客獲得にかかるコストの削減や収益の安定化に大きく貢献します。
リピート率とは、特定の期間内に商品を複数回購入した顧客の割合を示す指標です。顧客の行動ロイヤルティを測定するうえで最も基本的な指標であり、顧客が一度きりの購入で終わらず、継続して商品やサービスを利用しているかどうかを確認できます。
この数値が高いほど、顧客が商品やサービスに満足し、安定的に利用していると考えられ、リピーターが増えているとも言えるでしょう。
リピート率は、次の計算式で求められます。
リピート率 = (期間内に2回以上購入した顧客数 ÷ 期間内の全顧客数) × 100
例えば、ある月に新規・既存を合わせて1,000人の顧客がいて、そのうち300人が2回以上購入した場合、リピート率は30%となります。
価格やキャンペーンによる一時的な行動なのか、それともブランドへの愛着によるものなのかを理解するためには、後述するNPS®など感情面を測る指標と組み合わせて分析する必要があります。
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、顧客が企業との取引を開始してから終了するまでに、その企業にもたらす総利益を示す指標です。売上額ではなく利益ベースで考える点が重要であり、顧客ロイヤルティを長期的な収益の観点から評価するものといえます。
LTVは、次の計算式で求められます。
LTV = 平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入頻度(回/年) × 平均継続期間(年)
例えば、平均購入単価が5,000円、粗利率が40%、平均購入頻度が年4回、平均継続期間が5年であれば、LTVは4万円となります。
LTVを向上させることは、短期的な売上拡大にとどまらず、企業の持続的な成長にも直結します。LTVを高めるためには、単に新規顧客を獲得するだけでなく、既存顧客の満足度を高めてリピートをうながし、1人あたりの購入額を増やす施策が効果的です。
さらに、LTVが高い顧客層の特性を分析すれば、その層に焦点を当てたマーケティング戦略を立案することも可能です。
顧客ロイヤルティは、購買や利用といった行動だけでなく、顧客の感情や心理を理解することでその本質が見えてきます。
ここで取り上げる指標は、顧客がサービスやブランドに対して抱く感情を数値化するためのものです。これらの指標は、満足度や推奨意向、利用時のストレスの度合いを測定し、行動の背景にある「なぜ?」を明らかにする手がかりとなります。
CSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度)とは、顧客が商品やサービス、あるいは特定のインタラクション(例:カスタマーサポート対応)に対して、どの程度満足しているかを測る指標です。
一般的にはアンケート形式で、「今回のサービスにどれくらい満足しましたか?」といった質問に対し、「非常に不満」から「非常に満足」までの5段階評価や7段階評価で回答を求めます。
CSATは次の式で算出されます。
CSAT = (「満足」「非常に満足」と回答した顧客数 ÷ アンケート回答者総数) × 100
この指標は、特定の時点における顧客の満足度をピンポイントで把握するのに適しています。例えば、商品購入直後や問い合わせ対応後など、顧客体験(CX:Customer Experience)の各タッチポイントで計測することで、どこに課題があるのかを具体的に特定できます。
ただし、CSATの数値が高いからといって、必ずしも顧客ロイヤルティが高いとは限りません。顧客は「満足」していても、より良い競合が現れれば、そちらに乗り換える可能性があるからです。
そのため、CSATは単独で用いるのではなく、次に紹介するNPS®(顧客の推奨意向)やCES(顧客努力指標)といった他の指標と組み合わせて分析することで、より深いインサイトを得られます。
NPS®(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)は、顧客ロイヤルティにおける「推奨意向」を測定するための代表的な指標です。
質問内容はシンプルで、「あなたは、この商品・サービスを友人や同僚にどのくらい勧めたいですか?」という問いに対し、0から10までの11段階で評価を求めます。
回答は次の3つのグループに分類されます。
| 推奨者(Promoters) 9〜10点 |
ブランドに強い愛着を持ち、積極的に推奨してくれる熱心なファン |
|---|---|
| 中立者(Passives) 7〜8点 |
満足はしているものの、特別な愛着はなく、推奨者や批判者に移行する可能性がある潜在的なファン |
| 批判者(Detractors) 0〜6点 |
商品やサービスに不満を抱いており、ネガティブな口コミを広めるリスクがある顧客 |
NPS®は次の式で算出されます。
NPS® = (推奨者の割合) − (批判者の割合)
結果は-100から100の範囲で表され、数値が高いほどロイヤルティが高いことを示します。CSATが特定の時点での満足度を測るのに対し、NPS®は顧客の感情や将来的な行動(推奨)を予測する指標として位置づけられ、企業の収益性との相関も高いとされています。
そのため、NPS®は推奨者や中立者を増やし、口コミによる成長を後押しするための重要な指針となります。
CES(Customer Effort Score:顧客努力指標)とは、顧客が商品やサービスを利用したり、課題を解決したりする際に、どれだけの「努力」を要したかを測定する指標です。その根底には、「顧客は満足度そのものよりも、いかに手間なくサービスを利用できるかを重視する」という考え方があります。
また、カスタマーサポートやカスタマーサクセスなど、顧客が課題に直面しやすいタッチポイントで特に効果を発揮します。例えば「問い合わせ窓口が見つかりにくい」「手続きが複雑で時間がかかる」といった不便を具体的に明らかにし、改善につなげられます。
CESは一般的にはアンケート形式で、「今回の問題解決のために、どの程度の負担がありましたか?」と質問し、「非常に負担があった」から「全く負担がなかった」までの7段階評価で回答を求めます。
CESの計算方法
CESの算出方法には主に2種類があります。
CES = (全回答の合計点) ÷ (回答者数)
この場合、数値が高いほど「負担が少なかった」ことを意味します。この計算方式は、顧客全体の努力レベルを継続的に追跡する場合に適しています。
CES = (ポジティブ回答の割合) − (ネガティブ回答の割合)
この場合、スコアは-100%から100%の範囲で表され、プラスに近いほど顧客体験がスムーズだったことを示します。計算方法はNPS®(ネットプロモータースコア)に似ており、課題を直感的に把握しやすいというメリットがあります。
顧客ロイヤルティを高めることは、企業の持続的な成長を支えるうえで、主に以下3つのメリットを生み出します。
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顧客ロイヤルティを高めるためには、割引やキャンペーンといった短期的な施策だけではなく、以下のような長期的取り組みが求められます。

顧客ロイヤルティを高めるには、自社の感覚だけに頼るのではなく、顧客の声を正確に把握することが重要です。以下では、顧客満足度調査(CS調査)を通じて明らかになった課題に対し、どのように改善策を実施し、ロイヤルティ向上につなげたのかを、3つの業界の事例で紹介します。
事例1:アパレルブランドA社
アパレルブランドA社は、顧客満足度調査の結果、NPS®(ネットプロモータースコア)が低いことが判明しました。特に「価格が高い」という理由で「推奨しない」と答える顧客が多く、価格に対するブランド価値を十分に感じられていないことが課題と、分析。
この問題に対し、A社では商品の素材や生産背景、デザイナーの想いなどを伝えるコンテンツをSNSやウェブサイトで強化しました。また、購買履歴に基づいて最適なコーディネート提案や新商品の先行案内をメールで配信するなど、パーソナライズ施策を導入しました。
こうした取り組みにより、顧客のブランドへの愛着が高まり、再調査ではNPS®を改善しました。顧客には価格以上の価値を感じてもらえるようになり、ロイヤルティ向上も確認されました。
事例2:ホテルチェーンB社
ホテルチェーンB社では、顧客満足度の調査結果から、チェックイン・チェックアウト時の待ち時間と、客室のWi-Fi環境に不満が多いことが判明。B社ではこれらがリピート意向の低さにつながっていると考えました。
B社は改善策として、チェックイン・チェックアウトを簡素化するモバイルアプリを導入し、待ち時間を削減しました。さらにWi-Fi環境を全面的に見直し、すべての客室で比較的安定した接続を可能にしました。
その結果、施策後の再調査ではCSAT(顧客満足度)やリピート率が上昇し、顧客ロイヤルティの改善が確認されました。
事例3:オンライン金融サービスC社
オンライン金融サービスC社では、CES(顧客努力指標)の調査結果が低く、特に初期設定や問い合わせプロセスの複雑さが課題として浮かび上がりました。そして、この課題により、多くの顧客が「不便さ」を感じていたことが分かりました。
これに対し、初期設定を分かりやすく解説する動画チュートリアルをウェブサイトに掲載しました。また、問い合わせ窓口を一本化し、AIチャットボットを導入することで、顧客が必要な情報に迅速にアクセスできる環境を整備しました。
こういった改善の結果、CESスコアが改善しました。顧客のストレスが軽減されたことで、満足度と信頼感が向上し、顧客ロイヤルティの向上を実現しました。
この記事では、顧客ロイヤルティの重要性と、それを測定するための具体的な指標について解説しました。
顧客ロイヤルティとは、単なるリピート購入にとどまらず、ブランドへの深い信頼と愛着を意味します。これを正しく評価するためには、解約率やLTVといった行動を測る指標に加え、NPS®やCSATといった感情を測る指標を組み合わせて活用することが大切です。
顧客ロイヤルティを高めることは、収益の安定化、顧客単価の向上、そしてブランドの評判強化といった多くのメリットをもたらします。
だからこそ、顧客の声にしっかり耳を傾け、継続的な改善を積み重ねて「真のファン」を増やし、企業の持続的な成長を実現していきましょう。
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