モデレーターは3つの役割を一度にこなす必要があります。
- ひとりの出席者(対象者)として場の中に溶け込む
- 場全体の動向をコントロールしてテーマに沿った流れを作る
- 場の中に溶け込みつつ、冷静な分析者として全体を見渡す
「ひとりの出席者」の意味は、集団の中で浮いた存在にならないようにするということです。そうかと言って積極的に評価する発言は厳禁ですので、いわば「無口な出席者」になることです。集団に溶け込みつつ要所ではテーマに沿うように集団をコントロールできないといけません。1と少し矛盾しますが毅然たる態度も必要です。
さらに集団全体を俯瞰する視点を持ってモデレーションする必要があります。グループインタビューはその最中から分析作業は始まっていますし、仮説のスクラップ・アンド・ビルドを行いながら集団をコントロールしていきます。
調査目的を理解し、より多くの情報を対象者から聞き出すのではなく「見つけ出す」ことができるモデレーターを選ぶことが、成功への道です。
モデレーターの更なる役割
グループインタビューを行っているときのモデレーターの役割は前述のとおりです。が、モデレーターの役割はそれだけではありません。モデレーターに必要なスキルやセンスについて考えることでモデレーターの役割について明らかにします。
- マーケティング・センス
グループインタビューはマーケティング・リサーチの方法論です。モデレーションを行うにはマーケティングに関する知識やセンスが必要です。なかでも消費者行動に関する基本的な知識が重要です。
- モデレーションのスキル
人は第一印象で「好き・嫌い」の判断をしてしまいがちです。モデレーターも人の子ですから、好ましい対象者とイヤな対象者という好悪の感情が出てくるのは当然です。それを表に出さない、イヤなタイプの対象者からも情報を引き出すという、感情コントロールと対象者への興味・関心の公平化というスキルが要求されます。
- スクラップ・アンド・ビルドができる柔軟性と創造性
予見を持たずにモデレーションを行うことは不可能ですし、有効でもありません。モデレーターはたくさんの仮説を持ってモデレーションに臨み、対象者の反応で仮説を検証し、棄却すべきはその場で捨てて新たな仮説を構築するという連続作業をこなして行きます。仮説に固執せず、新たな仮説を作れる創造性も要求されます。
- 分析スキル
モデレーターの分析スキルは、データの解析とは違います。グループインタビューには集計表はありません。データとしては記録された発言録と録音録画があるだけです。これらのデータから対象者の発言の背景を想定し、発言の意味を再構築しながらマーケティングのストーリーを作り上げていきます。