アンケート調査の設問には、回答者が無意識のうちに影響を受ける要素が数多く存在し、次のような違いだけでも結果が変化します。
質問内容の本質は同じように見えても、これらの表現や順序の違いが、回答者の“感じ方”や“選び方”を変えてしまうのです。
たとえば、中立的な選択肢を真ん中に置くと「無難な選択」として選ばれやすくなり、末尾に置くと「データのばらつき」がみられる可能性があります。
この考え方を検証するために、弊社では2025年に実験調査を行いました。これは、調査そのものを目的とするのではなく、設問設計の違いが回答にどのような影響を与えるかを検証する研究的な調査です。
実験では、全国の回答者1,800名超を対象に、性別・年代構成などを揃えた複数のグループを作成し、設問文や選択肢の配置だけを変えたパターン(A群/B群、グループ①/②など)で比較を行いました。
その結果、次のような傾向が確認されています。
・中立的な選択肢(例:「普通」「どちらともいえない」)が真ん中にあるときの方が、末尾にあるときより選ばれやすい
・「すべてお選びください」と表現した場合の方が、「いくつでもお選びください」より多く回答される
・排他選択肢(例:「見たくなることはない」)を最初に置くと、他の選択肢が選ばれにくくなる
こうした違いは、設問の「内容」ではなく「構造(言葉の置き方・順序)」が回答行動を変えている可能性を示しています。
統計的検定(t検定やカイ二乗検定など)は、母集団を代表するサンプルで有意差を確認する際に有効です。
しかし、今回のような実験調査では、「母集団の平均値を推定する」ことが目的ではなく、設問構造の違いが回答をどう変えるかを理解することが目的です。
そのため、「有意差があるかどうか」を判定するよりも、同じ傾向が複数の質問・複数の項目で一貫して現れるかという“再現性”を重視しています。
▶ 設問効果を確かめる仕組み
このように、「設問構造のみを変えた比較設計」で差を観察することで、設問そのものの効果を把握できます。
統計的検定は行わなくても、設計上の統制と再現傾向の確認によって、十分に信頼性を担保することが可能です。
アンケートにおける5段階評価(リッカート尺度)の活用方法
あらかじめ設定された明確な評価段階(スケール)に従って、ある特定の事物や事象を判断させる方法のことを「評定尺度法」といい、その評価段階(スケール)のことを「リッカート尺度」といいます。
リッカート尺度では、回答者にとって明確な事実を回答するものではないので、白黒はっきり回答しづらい質問でもその程度や振れ幅を聴取することができるため、アンケートの深い考察を可能とします。
このコラムでは、アンケートにおける5段階評価(リッカート尺度)における活用シーンやメリット、デメリット、注意点などについて解説します。
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【検証レポート】設問文・選択肢の見せ方で回答データは変わるのか?
設問文・選択肢の見せ方で、回答データに差は生まれるのかを検証し解説したレポートです。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● 設問文・選択肢の見せ方でどの程度回答データに差が出るのか知りたい
● 設問設計による回答バイアスを最小限に抑えたい
● アンケート調査を設計しているため、事前に設計による回答の違いを把握しておきたい
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アンケート選択肢の“文言”や“位置”で結果は変わる?調査設計の盲点に迫る~実験調査の公開と解説~
今回のテーマは、アンケートの選択肢における“文言”や“位置”です。調査設計における、細かな違いが回答にどう影響するかという、見過ごされがちなポイントについて検証しています。
回答データの“見えないバイアス”を回避するための、実践的な設計のヒントを、レポートと共にご紹介。実務経験が豊富なリサーチャーによる、“設問形式”が回答に与える影響についての考察をお届けします。
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・設問の作り方が回答に与える“バイアス”の影響を把握したい
・5段階評価をはじめ、評価尺度の設計精度を高めたい
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